ビフォーアフター社長日記

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ホープ・ストラテジーからの脱却 12月16日 SHIPの朝礼

おはようございます。12月16日SHIPの朝礼を始めます。

「来期は順調に売上は純増する」
「反省しているので次回はきっとうまくいくはずだ」

まだ12月半ばですが、来期のことも考慮にいれる時期でもありますので、このような言葉に注意しておきましょう、という話です。

このような戦略を立てているような安易な考え方を「ホープ・ストラテジー(Hope Strategy)」と呼びます。

「希望」は戦略ではない

「Hope is not a strategy(希望は戦略ではない)」
これはビジネスやマネジメントの世界で語られる有名な戒めの言葉です。

ホープ・ストラテジーとは、その名の通り「こうなってほしい」という希望的観測を、戦略の代わりにしてしまうことです。「気合でカバーする」「なんとかなるだろう」という精神論や、根拠のない楽観視でプロジェクトを進めること。厳しい言い方をすれば、それは計画ではなく単なる「祈り」に過ぎません。

なぜ、私たちはこの単純な罠にはまってしまうのでしょうか。
それは、私たちが本能的に「早く行動して安心したい」という欲求を持っているからです。眉間に皺を寄せて過去を分析する時間は苦しく、手を動かしている時間は(たとえそれが的外れでも)仕事をしているような錯覚を与えてくれます。

その結果、私たちは致命的なミスを犯します。
それは、問題解決の地図である「ダブルダイヤモンド」の左側をすっ飛ばし、いきなり右側の出口に飛びついてしまうことです。

最大の欠陥:「左側のダイヤモンド」の欠落

ここで、今期何度もミーティングや本ブログに登場した「ダブルダイヤモンド」フレームワークを思い出してください。物事を「発散」と「収束」を繰り返す2つのダイヤモンド(菱形)で捉える思考法です。

  • 左側のダイヤモンド(問題空間):事実を集めて何が本当の問題なのかを探り(Discover)、特定する(Define)。
  • 右側のダイヤモンド(解決空間):解決策を考え出し(Develop)、実行する(Deliver)。

ホープ・ストラテジーの最大の欠陥は、この『左側のダイヤモンド(問題空間)』を完全に無視することにあります。
「何が真の課題なのか(Issue)」を深く考察することなく、いきなり「何をやるか(Do)」という『右側のダイヤモンド』の、しかも最後の実行フェーズに飛びついてしまうのです。

これは、医者が診察(左側のダイヤモンド)もせずに、いきなり手術(右側のダイヤモンド)を始めるようなものです。「どこが悪いかわかりませんが、とりあえず切ってみましょう。きっと治るはずです」と言われたら、誰だって逃げ出したくなるでしょう。しかし、ビジネスの計画作りでは、これと同じことが平然と行われています。

診察なき手術、つまり「課題特定なき解決行動」は、すべて運任せのギャンブルです。これこそが、いつまでたっても成果が安定しない根本原因なのです。

過去のファクトが「左側」の羅針盤になる

では、どうすればホープ・ストラテジーから脱却できるのか。
答えはシンプルです。勇気を持って立ち止まり、飛ばしてしまった「左側のダイヤモンド」に取り組むことです。

ここで重要になるのが、「過去の実績」という冷徹なファクト(事実)です。

未来の計画を立てる際、私たちはつい「これからどうしたいか(Will)」ばかりを語りたがります。しかし、左側のダイヤモンドを正しく機能させるために必要なのは、夢ではなく現実です。

「前期の結果はどうだったのか?」
「なぜ、その数字になったのか?」
「具体的に何をして(あるいは何をしないで)、その結果が生まれたのか?」

このように、過去の行動と結果の因果関係を徹底的に分解します。うまくいかなかった結果があるならば、そこには必ず構造的な原因があります。その原因を突き止めることこそが、ダブルダイヤモンドにおける「Discover(発見)」と「Define(定義)」のプロセスです。

「なんとなく不調だった」で終わらせず、「Aという施策を行ったが、ターゲットのBというニーズと乖離していたため、Cという結果になった」というレベルまで解像度を上げる。
ここまで因果を明らかにして初めて、「解決すべき真の課題(Issue)」が見えてきます。

「祈り」をやめて「設計」しよう

もし、これまでの結果が芳しくないのであれば、同じ思考プロセスで計画を立てても、また同じ「よくない結果」が繰り返されるだけです。

「来期は頑張ります」という言葉はもう封印しましょう。
必要なのは、「過去の因果を分析した結果、ここがボトルネック(Issue)であることが判明した。だから、この構造を変えるためにこの行動をとる」という論理です。

ダブルダイヤモンド・フレームワークは、単なる図解ツールではありません。それは、私たちが「運任せのギャンブラー」から、「勝算を持った設計者(アーキテクト)」へと進化するための思考装置です。

まず、左側のダイヤモンドに戻りましょう。
事実を見つめ、因果を紐解き、解くべき問いを定める。
その泥臭いプロセスを経た先にだけ、「Hope(願望)」ではない、確かな「Strategy(戦略)」が浮かび上がってくるのです。

以上で朝礼を終わります。

2 コメント

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  1. おはようございます。

    来期の計画で「売上は伸びるはず」「次はうまくいく」といった希望的観測に頼る考え方=「ホープ・ストラテジー」は、戦略とは言えない。これは問題分析を省き、いきなり解決策に飛びつく危険な思考。ダブルダイヤモンドの左側である課題発見・定義を丁寧に行い、過去の実績という事実から因果関係を分析することが不可欠。
    祈りや気合ではなく、事実に基づいた設計こそが成果を安定させる真の戦略。

    計画を立てるうえで、まず現状を正しく把握することが欠かせないと学びました。理想の姿や目標を意識するあまり、考える前に行動してしまうと、成果につながらず無駄な動きになってしまうこともあります。来季、プロとして限られた時間の中で最短ルートを選び、生産性を高めながら、チームにより一層貢献できるよう取り組んでまいります。

    • >考える前に行動してしまうと、成果につながらず無駄な動きになってしまう

      成果もそうですが、何も残らないのが問題で
      解決すべき課題を考えるひとつひとつの経験が成長につながり、成功失敗はあるけど、成長につながります

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