おはようございます。12月5日 SHIPの朝礼を始めます。
はじめに:Webアクセスの減少は悪いことか?
https://digi-mado.jp/article/115215/?twclid=26i9aqclv68cwhe05nt6t0j8bs
先日発表された調査によると、BtoB企業の約4割が「この1年でWebアクセスが減少した」と回答しています。その主たる要因として挙げられているのが、生成AIによる回答の普及や、検索結果画面だけで用件が済む「ゼロクリック(Zero-Click)」現象の拡大です。
私たち住宅リフォーム業界のマーケティングにおいても、この潮流と無縁ではいられません。「以前よりホームページの反応が鈍くなった」と感じる経営者様も多いのではないでしょうか。
しかし、私たちが見ている数百社のデータ全体を俯瞰すると、単純な「アクセス減=業績悪化」という図式は必ずしも当てはまりません。むしろ、アクセスが減っても受注が伸びている企業が存在します。
本稿では、膨大なデータから見えてくる「ゼロクリック時代の正しい戦い方」について解説します。
1. 住宅リフォーム業界における「ゼロクリック」の正体
昨日の内容に加え、一般的なBtoB商材と異なり、地域密着型のリフォームビジネスにおいて「ゼロクリック」は以下の3つの形で現れます。
- Googleマップ(ローカルパック)での完結
「地域名 + リフォーム」で検索した際、Webサイトに訪れる前に、地図上の口コミや施工写真、営業時間を見て「ここなら安心だ」と判断し、そのまま電話をかける行動です。 - 画像検索・強調スニペットでの解決
「キッチン リフォーム 費用相場」などで検索し、Googleが表示する相場表や画像だけを見て納得し、離脱するパターンです。 - SNS(Instagram/YouTube)での指名検索化
検索エンジンの前にSNSで施工事例を見つけ、Webサイトに来る頃にはすでに「この会社に相談したい」という指名検索(ブランド検索)に変わっている現象です。
つまり、WebサイトのPV(ページビュー)が減っているのは、「情報収集の入り口が分散した」証拠であり、必ずしもネガティブな要因だけではないのです。
2. 数百社のデータから「追うべき」3つの指標
では、私たちはどのデータを注視すべきでしょうか? 従来の「セッション数」や「PV数」だけに囚われると、本質を見誤ります。以下の3つの指標の変化をクロス分析することで、正しい対策が見えてきます。
① 【指名検索率】の推移
- 見るべきデータ: 検索クエリ(Search Console)における「会社名」「屋号」での流入比率。
- 意味: 一般的なキーワード(例:「トイレ修理」)での流入が減り、ゼロクリックの影響を受けても、指名検索が減っていなければブランド力は健在です。逆に、指名検索まで減っている場合は、地域内での認知そのものが低下している危険信号です。
② 【GBPアクション数】と【Webアクセスの乖離】
- 見るべきデータ: Googleビジネスプロフィール(GBP)の「通話数」「ルート検索数」と、Webサイトの「セッション数」。
- 意味: Webアクセスが減っているのに、GBP経由の電話やルート検索が増えている(または維持されている)場合、それは「ゼロクリックで成功している」状態です。ユーザーはサイトを見ずに、Googleマップ上で貴社を選んでいます。
③ 【エンゲージメント率】と【CVR】の質
- 見るべきデータ: GA4におけるエンゲージメント率と、問い合わせ(CV)率。
- 意味: ゼロクリックが進むと、「なんとなく調べる層」の流入が減り、「本気で頼みたい層」だけがサイトに訪れるようになります。結果として、アクセス数は減ってもCVR(成約率)が向上しているのが理想的な状態です。
3. データに基づく具体的対策:AIO(AI検索最適化)への転換
調査結果にもある通り、今後はAIO(AI Overview対策)やSGE(Search Generative Experience)への対応が不可欠です。しかし、AIハックのような小手先の技術は不要です。AIは「権威ある確かな情報」を好みます。
地域のリフォーム会社が行うべき対策は、極めて泥臭く、しかし本質的な以下の2点です。
対策A:コンテンツAIO:「一次情報」としての施工事例等記事の構造化
AIは「どこかからコピーした一般的なリフォーム知識」ではなく、「独自の体験・事実」を引用したがります。
- Before: 「キッチンリフォームのポイント5選」という一般的な記事
- After: 「【〇〇市 A様邸】築30年のキッチンが、配管移動なしで対面式に変わった全工程と費用内訳」という具体的で固有の事例。
このような「一次情報」を増やし、かつ構造化データとしてWebサイトに実装することで、AI検索の引用元として選ばれやすくなります。
対策B:エンゲージメントAIO:デジタル上の「評判」の資産化
AIやユーザーが最も信頼するのは「第三者の評価」です。Googleマップの口コミ、SNSでの言及数などが、AIが企業を推奨する際の根拠となります。
- アクション: 完工時のお客様アンケートをデジタル(Google口コミ)へ誘導するフローの徹底。これを推進するアプリケーションを近くローンチする予定です。
対策C:テクニカルAIO:AIに対する親和性を上げるスキーマ実装
どんなに素晴らしい一次情報(対策A)があっても、AIがそれを正しく理解できなければ意味がありません。AIは人間のように画面のデザインを見ているのではなく、裏側のHTMLコードを読んでいます。
AIに情報を正しく伝えるための「翻訳機」の役割を果たすのが、テクニカルな実装です。
- 構造化データ(Schema.org)の徹底実装:
単にテキストを載せるだけでなく、「これは会社名」「これは電話番号」「これはリフォームのBefore/After画像」といった意味を検索エンジンに伝えるためのタグ付け(スキーママークアップ)を行います。
リフォーム会社であれば、LocalBusiness(地域のお店情報)、FAQPage(よくある質問)、施工手順を示すHowToなどのスキーマ実装が有効です。 - 論理的な文書構造(HTMLタグ)の最適化:
見出しタグ(H1, H2, H3…)をデザインのためではなく、文章の論理構造を示すために正しく使用します。AIは、整然と構造化された情報を好んで学習・引用します。
もう少しありますがこれらのテクニカルな対策は、シップ側の作業になります。
結論:データ保有者としての私たちの役割
「Webアクセスが減った」と嘆く必要はありません。それは、ユーザーがより効率的に情報を取得できるようになった結果であり、Webサイトの役割が「集客の入り口」から「最終確認の場(クロージング装置)」へとシフトしたことを意味します。
私たちは数百社のデータを横断的に分析できる立場にあります。
「アクセスが減ったが、利益が出ている会社」と「アクセスと共に衰退している会社」の違いは、この「指名検索」と「実在性(口コミ・マップ)」の強さに現れています。
PV至上主義から脱却し、「地域での指名されやすさ」と「成約の質」をデータで可視化・改善していくこと。これこそが、ゼロクリック時代に私たちが提供すべき真のマーケティング支援です。
以上で朝礼を終わります。
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