ビフォーアフター社長日記

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思考の経済性 6月16日 SHIPの朝礼

思考の経済性
―人間は考えるのが面倒な生き物である―

おはようございます。6月16日、SHIPの朝礼を始めます。

■ 情報に囲まれて生きる私たち

私たちは日々、無数の情報に囲まれながら、何かを学び、判断し、行動しています。その際、私たちは自分自身の意思で論理的に物事を考えていると信じたいと思うでしょう。

しかし、もし「人間は、複雑な情報の中から本質を見抜き、多角的に検証し、論理的に結論を導き出すという一連の思考プロセスを、本能的に避ける傾向がある」としたらどうでしょうか。この人間の根本的な性質こそが、GoogleのAIモードに代表されるAIアシスタントサービスが、社会の景色を急速に変えていく未来を後押ししているのです。

■ 「思考の経済性」とは何か

この人間の性質は、「思考の経済性」という考え方で説明されます。人間の脳は体重のわずか2%ほどの重さしかありませんが、体全体のエネルギーの約20%を消費する非常にエネルギーを使う器官です。

そのため、脳は常に「省エネモード」で動いており、意識的に考える「熟考」をできるだけ避け、直感や経験に頼る「思考のショートカット」を使おうとします。

ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン氏は、この思考の2つのモードを「システム1(直感的・高速)」と「システム2(論理的・低速)」と名付けました。人間は日常のほとんどをシステム1でこなし、エネルギーを使うシステム2を本能的に避けているのです。

■ 検索は「考える作業」だった

この原則に、従来の検索エンジンと生成AIを当てはめてみましょう。

キーワード検索は、まさに「システム2」を必要とするプロセスでした。ユーザーは自分の問いを的確なキーワードに言い換え、並んだ検索結果の中から信頼できる情報を選び、複数のサイトを比較しながら結論を導き出していました。

これは知的好奇心を満たす一方で、多くの手間や労力を必要とする「面倒な作業」でもありました。総務省の調査では、ネット上の誤情報や偽情報を約半数の人が信じてしまうという結果も出ています。これは、情報を一つひとつ検証するという骨の折れる作業を、多くの人が省略してしまっている証拠とも言えるでしょう。

■ AIは「考える面倒」を代行する存在

一方で、GoogleのAIモードのような生成AIサービスは、こうした思考の面倒を一手に引き受けてくれるツールです。ユーザーは曖昧な言葉で質問をするだけで、AIがその意図を汲み取り、膨大な情報の中から答えを要約して提示してくれます。

リンクをクリックして調べ回る必要もなければ、情報の正確性に悩む必要もありません。目の前に差し出された「お膳立てされた答え」を、ただ受け取るだけで済むのです。

■ 一度味わうと戻れない「快適さ」

この体験がもたらす「認知的な快適さ」は、一度味わってしまうと後戻りできないほど強力です。思考の経済性を求める人間の本能に、これほど合致したサービスは、これまで存在しなかったのではないでしょうか。

もちろん、AIの情報が必ずしも正確とは限らないことや、考えずに答えを得ることで思考力が低下する懸念もあります。特定の価値観に偏った答えが量産されれば、社会全体の思考が画一化してしまうリスクも否定できません。

■ それでも「進化」は止まらない

とはいえ、私たち人類は常に、自らの能力を拡張し、労力を減らすために新しい技術を取り入れてきました。馬車が自動車に、手紙が電子メールに置き換わったように、便利な技術が古いものを押しのけていくのは自然な流れです。

思考のプロセスもまた、例外ではないでしょう。面倒な思考はAIに任せて、人間はもっと創造的で感情的なことに集中する。そんな未来が、すぐそこまで来ているのです。

■ 変化の本質は「人間らしさ」そのもの

結論として、AIサービスの急速な普及は、単なる技術の流行ではありません。それは、「人間は考えるのが面倒な生き物である」という、私たちの根本的な性質に根ざした、必然の変化なのです。

今、私たちは自らの「思考」を外部に委ねるという、文明史における大きな転換点に立っています。

私たちが提供するAIサービスのアップデートも、この考察をベースにして考えていく必要があります。

以上で朝礼を終わります。

6 コメント

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  1. 人間は、考えることが面倒な特徴があるからそれをAIにゆだねる。
    今までは、検索して合致するサイトを見る工程が必要であったが、AIによりその工程を短縮。
    制作部分で使える部分はAIを利用し、方針・意図が合っているかの創造的で感情的な部分に集中すること。これが現実になるからこそ方針が前提の制作、履き違えません。

  2. おはようございます。

    人間の脳は常に「省エネモード」で動いており、意識的に考える「熟考」をできるだけ避け、直感や経験に頼る「思考のショートカット」を使おうとする。
    情報を一つひとつ検証するという骨の折れる作業を、多くの人が省略してしまっている為に、ネット上の誤情報や偽情報を約半数の人が信じてしまう。

    曖昧な言葉からも、意図を汲み取ってくれるAI。
    人間の言葉を理解することだけでも未来的、発展的ですが、人間が本能的に持っている「面倒くさい」部分を担ってくれる存在。
    まさに一度味わうと戻れないほど強力なサービスになりつつあるのを、日常的に肌で感じています。(友人間で「ChatGPT」という単語が当たり前に出てくるようになりました。)

    ただ、AIの出してくれた情報が正しいのか判断する際にも「システム2」のを避けてしまうことには留意が必要だと感じました。

    • ダニエル・カーネマン氏の論説とかも
      一度インプットしておくと、忘れても、ぼんやりと考え方は身につきますので
      ミニ読書として役立ててください

  3. おはようございます

    人間自体の構造を理解すると、
    必要なもの以外「省エネモード」になることは自身の経験上でも理解できることですし、

    システム2→システム1に検索での行動が移行することも納得ができます。

    実際にお客様にAI概要に関してお話しすると今のところ、意識せず100%体験されていて、
    しかも便利さを知っているので、元の検索に戻れない、物足りなさを感じるということを
    ご自身でおっしゃっています。

    僕らの立場からは、AIMODEに備えたWEBサイトの最適化を実行し、未来に備えておくことをお伝えして採用いただくことなので実行します。

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