心理的安全性について
おはようございます。6月13日SHIPの朝礼を始めます。
Google社の調査で「成功するチームの最も重要な要素」として発表されて以来、「心理的安全性」は、現代の組織運営における最重要キーワードの一つとなりました。誰もが安心して発言でき、挑戦できるチーム。その理想に異を唱える人はいないでしょう。
しかし、その追求が、意図せず組織を「なれあい」や「ぬるま湯」へと導いてしまうとしたら? 表面上は穏やかでも、本音の対話も健全な対立も失われ、誰も責任を取らないまま停滞していく。そんな皮肉な現実が、多くの職場で生まれることもあります。
この問題の根源には、心理的安全性に対する「ある致命的な誤解」と、私たちの組織に根深く存在する『設計士』と『職人』の構造的な断絶があります。
なぜ「安心」が「停滞」に変わるのか? ― 因果関係の罠
私たちは、心理的安全性を「作る」べき目標、つまり創造性や生産性を高めるための「原因」だと考えがちです。しかし、その捉え方こそが、最初の罠かもしれません。
因果関係を逆転させてみてはどうでしょうか。心理的安全性とは、人々が恐怖や忖度なく本音で語り合えるようになった「結果」として生まれる状態なのではないか、と。
この順序を間違え、「安心な状態」そのものを目的にしてしまうと、組織は本質的ではない方向に進み始めます。対立を避け、異論を抑え、耳の痛いフィードバックをなくすことで、「心理的に安全な空気」を演出しようとするのです。しかし、それは偽りの安全であり、ただの思考停止に他なりません。
対立を恐れる病 —『設計士』と『職人』の悲劇
なぜ組織は、「演出された安心」に逃げてしまうのでしょうか。その背景には、どんな組織にも存在する二つの異なる役割、『設計士』(The Architect)と『職人』(The Artisan)の視座の違いがあります。
- 『職人』(The Artisan) は、物事を「解像度高く」見る専門家です。目の前のタスクの品質や技術的な正しさを追求します。
- 『設計士』(The Architect) は、物事を「俯瞰的」に見る専門家です。プロジェクト全体の目的や、長期的な成功を追求します。
本来、この両者の視座の違いは、健全な対立を生み、より良いものを創造するための「資産」です。しかし、多くの組織では、この対立自体が「場の空気を壊す悪」と見なされてしまいます。
「和を以て貴しとなす」という文化は、時に「本音を殺して調和を保つ」という無言の規律と化します。『職人』は、より大きな視点からの指摘を「否定」と受け取ることを恐れ、自己検閲を始めます。『設計士』もまた、現場からの反発を「和を乱すこと」と恐れ、本質的な指摘をためらいます。
こうして、健全な対立の機会は失われ、組織は心地よい「忖度」の空気に満たされていくのです。
「空気」に頼るな、「構造」を信じよ
この根深い病を解決するのは、曖昧な「空気」の醸成ではありません。真の安全とは、個人の心理状態やその場の雰囲気に委ねられるものではなく、組織の仕組みそのものが持つべき「機能」なのです。
考えてみてください。あなたが本当に安心して発言できるのは、「優しい上司がいるから」でしょうか? それとも、「どんな意見を述べても、その内容が事実と論理に基づいて公正に扱われるという、信頼できるルールがあるから」でしょうか?
前者の安全は、上司の機嫌一つで消え去る、脆く不確かなものです。後者の安全こそ、組織が目指すべき、揺るぎない「構造的安全性」です。
強い「工房」を支える3つの構造
『設計士』と『職人』が真に対等な対話をするための「工房」は、信頼できる構造によって支えられています。
- 一貫性のある判断基準: 提案や異論が、個人の感情や権力ではなく、「事実と論理」に基づいて評価される仕組み。データや客観的な基準が、議論の最終的な拠り所となる。
- 健全な対立を促進するプロセス: 意見がぶつかった際に、それを建設的な結論に導くための公式な手順やルール。対立を個人の問題にせず、組織の成長機会と捉えるための仕組み。
- 明確な結果責任: 下された決定とその結果に対し、誰がどのように責任を負うのかが明確にされている文化と制度。自由な発言には、常に責任が伴うことを全員が理解している。
リーダーよ、空気を壊す覚悟はあるか
これらの構造を設計し、維持し、そして守り抜くこと。それこそが、リーダーに課せられた最も重要な責務です。
「みんなで仲良く」という心地よい「空気」作りに逃げるのは、リーダーシップの放棄に他なりません。真のリーダーは、時には自らが率先して「空気を壊す」覚悟を持ち、感情的な対立を恐れず、組織を「構造」に基づいて正しい方向に導きます。
私たちが目指すべきは、居心地の良い「空気」ではありません。信頼できる「構造」です。その強固で公正な土台の上でこそ、人々は忖度なく本音で語り合い、健全な対立を通じて、組織は進化を遂げることができます。
そのダイナミックで知的な活動の果実として、私たちの手の中に残るもの。それこそが、本物の「心理的安全性」なのだと思っています。
以上で朝礼を終わります。
2025年6月13日 at 3:32 PM
「演出された安心」ではなく、「構造的安全性」本物の「心理的安全性」を目指して行動していきます。
今までの安全と思っていることが、実はただの演出や忖度、対立しない状態を指していたのでは、プロとしての成長を見込めない。
これを自覚してリーダーが変わること。これが求められていることだと思いますので、構造を理解して、強いチームにしていきます。
2025年6月14日 at 9:32 AM
本物の「心理的安全性」に向かうこと自体が、他社との競争優位性をつくる要因になると思います
2025年6月14日 at 8:54 AM
構造を設計する。
チームで動くメリット価値をだし、
お客様に喜んでもらう。
構造を曖昧にして、なんとなくで進めることのないようにします。社内に見本もあるのでそこを参考にしていきます
2025年6月14日 at 9:33 AM
人は誰でも可能性があります
閉ざしている原因を取り除いていきましょう