新年が明けたと思ったらもう1月下旬です。「経営トップ 2020年 新年あいさつ」と検索すると「激動の時代」に続いて「イノベーションの推進」という類の言葉が並びます。
かくいう私も似たようなものなのですが、今年も去年も一昨年も同じようにイノベーション(革新)を連呼されてきました。それだけイノベーションができていないということにほかなりません。
そんな中でイノベーションがタイトルに入った書籍がベストセラーになっています。
「ひとりの妄想で未来は変わる VISION DRIVEN INNOVATION」(佐宗邦威著)
イノベーションの困難さは事業体を俯瞰的に見るとわかります。
時代に適合しなくなりつつある現在の事業構造Aから、時代の適応すべく事業構造Bを構想するということになります。
ですが、事業体Bの企画を決裁するのは、事業体Aのマネジメントなので、自分自身の利害に相反することであるし、そもそも事業体Bの世界観がわからなかったりしますので、イノベーションの種が拾われずに捨てられます。
事業構造Aのマネジメントというのは大晦日に紅白歌合戦を見て「今時の歌はわからないね~」とつぶやいている感覚と考えれば良いかと思います。
「ひとりの妄想で未来は変わる」では、イノベーションを実現できるのはマネジメントの「辺境」の人であり、その人の「妄想」であり、そこに集う「仲間」であり、そこに生まれる「文化」の場であり、そこで「ビジョン」が共有されて、「意志」が達成に導く、と私には読めました。
ここで今までビジネス書であまり登場しなかった言葉にお気づきいただけると思います。それは「妄想」です。このベストセラー本は、個人の「妄想」を肯定したはじめてのビジネス書ではないでしょうか。
ついでにもう1冊紹介します。「だから僕は、ググらない。」(浅生鴨著)は「妄想」の本です。私たちは普段、自分の疑問や興味を解決するためにすぐに検索します。前書きから抜粋します。
『実は検索で手に入る情報よりも、もっと広がりや奥行きのある情報を簡単に手に入れる方法があるのだ。
それが妄想だ。妄想で手に入るイメージは、検索では見つけられない。
だから僕は検索の前にさんざん妄想する。そして、それが癖になっている。』
検索すると1秒もかからずに多数の関連情報が表示されますが、そこから考えても、物ごとの構造でいえば「下層」レベルのアイディアをもてあそぶことになります。そのレベルの仕事が、ほとんどの人にとっては大部分ではあります。
しかし、このアプローチしか知らないとその人はいつまで経ってもイノベーションは担えません。イノベーションの種は個人の妄想です。
ミシュラン三ツ星を獲る妄想を実現するというテレビドラマ「東京グランメゾン」の倫子シェフの表彰のあいさつも最初は妄想だったことが示されています。
「ここ(ミシュラン三ツ星受賞)に立つことを夢見て、ずっとやってきました。(中略)情熱を持って向き合うこと。最後まで逃げないこと。お客様を一番に考えること。そして、自分を信じること。彼らが、私をこの場所に運んでくれました。みんな、ありがとう!」
2020年1月、たっぷりと「妄想」の時間をとって、妄想に耽りましょう。
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